2009年11月2日月曜日

THIS IS IT


 たぶん、彼があのような最後を迎えていなければ、この映像が映画として公開される事も無く、彼のライブを見に行く事も無いままに私も最後を迎える人生だったかもしれない。

 この映画は、彼の死後編集されたとはいえ、彼の死に関することには全く触れずに、何日間かのリハーサル風景を曲ごとに映像を混ぜ、切り替え、現場で次々と変わって行くアレンジや仕掛けのタイミングの決め方までも見せてくれる。
 本番さながらに代役を立てずに踊り歌うマイケルの、妥協しないプロ意識。そうだ、彼はダンサーでありシンガーでもあったことを思い出した。たとえ誰が彼の曲をカバーしても、彼の歌声にかなうものは無い。もう何百回聞いたか判らないI'll be thereを50歳の彼の声で聞きながら、そう思った。

 彼のバックミュージシャンの一人が言っていた言葉が印象的だった。
「いろんな一流ミュージシャンとやってきたが、ここが頂点だ」

 あの、不可解な整形を始めたり(途中から歯止めがきかなくなっているように見えた)、少年に対するいろいろな疑惑を受けたマイケル・ジャクソンは、普通なら引きこもり謎な私生活のまま年老いて行くような状況にもかかわらず、メディアに姿をあらわし世界中をツアーする。
 ここ数年のマイケルを見て、彼は何か伝えたいんじゃないだろうか? そう感じ無いでもなかったが、マスコミはそんな彼のメッセージよりもスキャンダルばかり報道する。そして、他の情報を知らない私たちは、そのスキャンダルに振り回され、いつしか色眼鏡で彼を見ていたのではなかったか?

 だが、そんなことはすべて吹っ飛んでしまった。彼が純粋に、すばらしい音楽とダンスを、世界平和と地球環境改善のためのメッセージを、世界中に伝えようとしていたことがよくわかる。

 たかがリハーサル映像の組み合わせなのに、ここまで心が動かされるとは思いもよらなかった。